「ホルスは強い、強いんだ!」
日本が世界に誇るアニメ界の天才2人、高畑勲と宮崎駿の原点と言われるこのアニメ映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』。
完璧主義者、高畑勲が一切の妥協をせずに作り上げたこのアニメ映画は、興行的には大コケでしたが、当時高畑勲32歳、宮崎駿27歳、この若さにしてこの圧倒的なクオリティには今なお驚かされます。
現在(2024年3月時点)DMMTV(DMMプレミアム)にて視聴できますので、初視聴して、感想を書いていきたいと思います!
(若干のネタバレがあります)
『太陽の王子 ホルスの大冒険』
1968年 日本映画 上映時間 82分
監督 :高畑勲
脚本 :深沢一男
音楽 :間宮芳生
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目次
概要
アイヌ民族の伝承を基にした戯曲『チキサニの太陽』を、原作者でもある深沢一夫自身が翻案し、舞台を「さむい北国のとおいむかし」として製作された作品である。
あらすじ
ある日岩男モーグに出会ったホルスは、モーグの肩に刺さっていた太陽の剣(たいようのつるぎ)を抜く。
モーグはその剣を鍛えなおした暁には、それを持つ者は太陽の王子と呼ばれるだろうと告げた。
その後父の死を看取ったホルスは、父の遺言通り、他の人間と共に生きるため、他の人間の住む陸地を目指して旅立つ。
登場人物
ホルス
本作の主人公。
手斧を巧みに操る、勇敢で真っすぐな性格の少年。
ヒルダ
本作のヒロイン。
グルンワルドの妹の孤独な少女。
美しい歌声で人々を魅了する能力がある。
グルンワルド
声:平幹二朗 キャラクターデザイン:宮崎駿、奥山玲子、林静一
氷の城に住む悪魔。
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感想
冒頭の戦闘シーンからこだわりが満載
さすが日本アニメ界が誇る2人の天才、高畑勲と宮崎駿のコンビ作だけに、冒頭のホルスと狼の群れとの戦闘シーンから、こだわりが満載です。
まず昔のアニメ、特にスケジュール的に厳しいテレビアニメはそうですが、止め絵で口だけがパクパク動いている、といった紙芝居アニメが多いですが、このアニメ映画はとにかく動く、動く!
止め絵などまったく使わないところに、2人のこだわりを感じます。
そしてホルスの走り方は『風の谷のナウシカ』の作画に通じるところがあります。
その後すぐに登場する、岩男モーグのぬるぬる動く作画も、本当にすごい!
展開が非常に早い
まどろっこしい前置きなど一切なく、いきなりホルスと狼の群れとの激しい戦闘シーンからスタート。
そして今見てもすごいアニメーションの岩男モーグとの出会いからの、太陽の剣の獲得、開始約5分でオープニングクレジット。
開始約10分でホルスの旅立ちと、現在のアニメ映画と比較すると非常に展開が早いです。
上映時間82分と、時間の短さもありますが、非常に心地よいテンポの序盤となっています。
音楽と声優の演技には正直古さを感じる
作画のクオリティは圧倒的ですが、それと比較して、音楽と声優の演技は正直当時のテレビアニメと大差ありません。
作画のクオリティだけが飛びぬけて圧倒的に高いところから、高畑勲と宮崎駿の能力が時代の先を行っていたことがはっきりとわかります。
キャラクターデザインが一定ではない
このアニメ映画、様々なアニメーターがキャラクターデザインに関わっているので、現在のジブリアニメなどと比較すると、様々な絵柄のキャラが混在している印象です。
初代ルパンっぽいキャラもいれば、典型的な宮崎アニメっぽいキャラも出てきて、色々ごちゃまぜな感じです。
もう一人の主人公、ヒルダ
中盤以降、主人公ホルスを差し置いて、悪魔の兄グルンワルドと人間たちの間に挟まれて苦悩するヒロイン、ヒルダの出番が多くなります。
中盤からクライマックスまでは、ヒルダが主役、と言っても過言ではないほどの扱いになります。
最初一人で戦っていたホルスが、団結し、皆で悪と立ち向かう
悪魔に立ち向かうための最強の武器「太陽の剣」。
岩男モーグの肩から抜いたその剣は、ホルス一人の力で鍛え上げることはできず、皆の力で鍛え上げ、クライマックスにおいてついにその真の姿を現します。
そしてある意味で最強のキャラ、岩男モーグもホルスに加勢に入ります。
ラスボスである悪魔グルンワルドも、ホルス一人ではなく皆の力で撃退。
氷マンモスも、狼たちも、ヒルダも、全ての手下を失ったグルンワルドの意外な弱さが印象的です。
まとめ(半世紀以上前の作品ながら、今なお光り輝く名作)
2人の天才、高畑勲と宮崎駿の原点であるこのアニメ映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』について解説している方々はたくさんおりますが、シンプルに、この作品が面白いか否かで評価すると、『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』のような圧倒的な面白さはありません。
しかし、『風の谷のナウシカ』に登場する巨神兵の原型のような岩男モーグ、宮崎アニメのヒロインとは一味も二味も違う、この物語の真の主人公とも言える孤高のヒロイン、ヒルダなど、見どころはたくさんあります。
粗削りながら、2人の天才が若き情熱の全てを注ぎ込んだ、公開から半世紀以上たった今なお光り輝く名作と言える作品でしょう。
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