「ようこそ、最先端のカオスへ」
このキャッチコピーの通り、とってもカオスなこの映画。
アカデミー賞で7部門受賞して、その年の主役になったこの映画。
しかし一般レビューでは賛否両論で、悪評も多いこの映画。
観てみたら本当にカオスで、そしてエキセントリックだったこの映画、ネタバレなしで感想とレビューを書いていきたいと思います!
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
2022年 アメリカ映画 原題:Everything Everywhere All at Once
上映時間 140分
監督 :ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート
脚本 :ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート
音楽 :サン・ラックス
目次
あらすじ
中国からアメリカに移住してきて、悪戦苦闘しながらコインランドリーを経営する女性、エブリン。
確定申告の日、エブリンは夫ウェイモンドに乗り移った「別の宇宙の夫」から、全宇宙の命運を託されてしまう。
様々な「他の宇宙」に存在する「もしかしたらこうなっていたかもしれない自分」に転移し続けながら、エブリンは自分の娘の姿をしたマルチバースの脅威、ジョブ・トゥパキと戦うこととなる。
登場人物
エヴリン・ワン・クワン/ミシェル・ヨー
本作の主人公。
コインランドリーを経営する中年女性。
中国生まれでアメリカに移住してきた人間なので、英語はあまり上手くはない。
娘のジョイの同性愛に反対している。
ジョイ・ワン(ジョブ・トゥパキ)/ステファニー・スー
エヴリンとウェイモンドの娘。
女性の恋人、ベッキーがいる。
他のバースにおいてマルチバースの脅威となる、「ジョブ・トゥパキ」としてエヴリンの前に立ちはだかる。
ウェイモンド・ワン/キー・ホイ・クァン
エヴリンの夫。
優しくコミュ力ある男性だが、頼りにはならない。
マルチバースとは
この映画はいわゆるマルチバースものですが、マルチバースという聞きなれない言葉はどういう意味かというと、
「自分のいる世界とは別に、他の宇宙・世界が複数存在するという科学理論」
のことです。
この映画の中では、冒頭から登場するコインランドリーの経営者としてのエヴリンの他に、他の宇宙のエヴリンとして、カンフーの達人、歌手、シェフなど、様々な属性を持つエヴリンが存在し、それらの別宇宙を頻繁に行き来するので、観ていてちょっとわけがわからなくなることもあります。
第95回アカデミー賞で7部門受賞
この作品は第95回アカデミー賞で
- 作品賞
- 監督賞(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート)
- 主演女優賞(ミシェル・ヨー)
- 助演男優賞(キー・ホイ・クァン)
- 助演女優賞(ジェイミー・リー・カーティス)
- 脚本賞(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート)
- 編集賞(ポール・ロジャース)
の7部門受賞しました。
主人公のエブリンを演じた女優、ミシェル・ヨーが主演女優賞を受賞しましたが、アジア系俳優が主演女優賞を獲得するのは史上初の快挙です。
感想
中国語と英語が交じり合う不思議な会話
冒頭から中国語と英語が交じり合う、不思議な会話シーン。
日本人から見るとかなり奇妙ですが、アメリカに住む中国系移民の人にとっては当たり前の光景なのでしょう。
中国から移住したエヴリンとウェイモンドの夫婦と違い、アメリカ生まれの彼らの娘のジョイは、中国語よりも英語のほうが上手いようです。
マイノリティとしての苦悩
序盤、アメリカ社会において、黒人、ヒスパニック以下のマイノリティであるアジア系であることの苦悩が描かれています。
冒頭、コインランドリーを経営するエヴリンの姿は、あくせくしているだけで、少しも楽しそうではありません。
「あの」キー・ホイ・クァンが出演
映画ファンなら誰もが見ているであろう名作、『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』と『グーニーズ』に出演していた、あの魅力的なアジア系の少年、キー・ホイ・クァンが久しぶりに映画俳優に復帰。
冒険活劇でスクリーンを駆け回っていたあの少年が、こんな普通っぽいおじさんに、と思うと感慨深い気持ちになりますね~。
彼は童顔で、よく見ると少年の頃の面影がしっかり残っていますね!
悪趣味なMVを延々と見せられている感じ
この映画、ストーリー性があまりなく、せわしなく場面が移り変わり、奇抜なシーンが連続するので、ミュージックビデオを延々と見せられている気分になります。
その上、下ネタが多いので、MVはMVでも悪趣味なMV、という印象です。
カンフー要素は少ない
この映画はマルチバースもののSFであると同時に、カンフーアクション映画でもありますが、カンフー要素はかなり少ない印象です。
前半にキー・ホイ・クァン演じるウェイモンドが、ウエストポーチをヌンチャクのように使って戦うカンフーアクションシーンがありますが、カンフーアクションとしてはあのシーンがピークではないでしょうか。
ミシェル・ヨーも60歳であれだけ動けるのはすごいですが、目を見張るようなアクションシーンはありませんでした。
壮大なスケールの親子喧嘩
この映画のストーリーを簡単に、本当に簡単に説明すると、
「娘の同性愛が認められない母親と、認めてほしい娘との闘い」
これをマルチバースで壮大なスケールでやっているだけです。
何せラスボスが娘なのですから。
『君たちはどう生きるか』との共通点も?
第96回アカデミー賞において長編アニメーション賞を受賞した、宮崎駿監督作品『君たちはどう生きるか』。
この作品もストーリー性が薄く、主人公が異世界に行ってからは「宮崎駿監督の夢の世界を延々と見せられているようだ」という感想も多くありましたが、この『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も同系統の作品だとは言えないでしょうか?
とりとめのない映像が延々と続く感じは、主人公エブリンの脳内世界を延々と見せられているような感覚です。
この映画で1番痛快だったシーン
主人公エブリンが、監察官の女性ディアドラの顔面をパンチしたところ!
まとめ
さて、第95回アカデミー賞の主役だったこの作品。
シンプルに、面白かったか否かでいうと、面白くなかったです。
まとめれば30分で済む、確定申告+親子喧嘩の話を、壮大なスケールで、140分に引き延ばしているという印象でした。
しかしこれは日本に住む日本人の私には刺さらなかったという話で、アメリカに住むマイノリティやZ世代には刺さりまくったようで、興行収入的にも大成功しています。
エキセントリックな映像が延々と続くこの映画、いわゆる王道的な面白い映画を求めている人には正直全くおすすめしません。
しかし独創的な映像、斬新な演出を求めている人なら、もしかしたら刺さる映画になるかもしれませんね。
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(字幕/吹替)
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