ダーク&シリアス路線で突き進む近年のバットマン映画。
「なぞなぞ男」リドラーがヴィランとして登場する今作はどうなのか?
前知識なしに観た感想です。
(ネタバレなしのレビューですが、特定のキャラ、シーンに対する言及はあります)
『ザ・バットマン』
上映時間 176分
監督 :マット・リーヴス
脚本 :マット・リーヴス ピーター・クレイグ
(キャスト)
セリーナ・カイル/キャットウーマン :ゾーイ・クラヴィッツ
ジェームズ・ゴードン警部補 :ジェフリー・ライト
カーマイン・ファルコーネ :ジョン・タトゥーロ
ペンギン :コリン・ファレル
予告編はこちら↓
目次
あらすじ
幼いころに両親を暴漢に殺されたことから、蝙蝠の衣装を身にまとって犯罪者と戦うようになったブルース・ウェイン/バットマン。
バットマンとしての活動を始めてから2年目、ゴッサムシティの市長が何者かに殺害された。
犯人を名乗るリドラーは、犯行現場になぞなぞを残し、バットマンに挑戦を仕掛ける。
「バットマン」とは
日本では「アメコミ」と略されるアメリカンコミックスは主に「マーベルコミックス」と「DCコミックス」の2つの企業が作っていますが、バットマンはスーパーマンと並ぶDCコミックスの代表的なヒーローキャラクターです。
スーパーマンが宇宙人で超能力者なのに対し、バットマンはブルース・ウェインというゴッサムシティの億万長者の人間の男性が、強化スーツを身にまとうことで強くなっている、という設定になっています。
アカデミー賞3部門にノミネート
本作は第95回アカデミー賞3部門にノミネートしています。
・メイクアップ・ヘアスタイリング賞
・音響賞
・視覚効果賞
感想
な、長い・・・
約3時間の映画。
長い映画が好きではない私は、そんなに長くしたいのなら、ドラマシリーズにでもすればよかったのに、と思ってしまいます。
ノーラン版のバットマンより陰鬱な雰囲気
クリストファー・ノーラン監督のバットマンシリーズ、「ダークナイト3部作」はそれまでのバットマン作品にはない、ダークでシリアスな雰囲気で大ヒットしましたが、こちらはダークというより陰鬱な雰囲気です。
戦闘シーンに爽快感がない
この『ザ・バットマン』の戦闘シーンは妙にリアルで、それも悪いほうのリアルさが出てしまっている印象です。
敵が派手に吹っ飛ぶこともなく、スローモーションなどで爽快感を演出する、ということもなく、ただ普通の男が殴り合っている、という感じの戦闘シーンです。
ブルース・ウェイン/バットマンはスーパーマンと違って普通の人間がパワードスーツで強化しているだけなので、当然といえばそうですが、この映画の戦闘シーンで爽快感を得ることはできません。
少し前に『ブルーアイ・サムライ』で圧倒的な爽快感の戦闘シーンを見ていたので、なおさらそう感じてしまいました。
ブルース・ウェインの印象が今までのバットマン映画とかなり違う
今までのバットマン映画では彼の姿は「立派な紳士」といった印象でしたが、この「ザ・バットマン」では前髪をだらしなく伸ばした
「落ちぶれたロックスター」
「やさぐれた若者」
といった印象を受けました。
チンピラグループに絡まれるアジア系男性というリアルな演出
開始早々ハロウィンの仮装でメイクしているチンピラグループに絡まれる、真面目そうなアジア系男性。
そこにバットマンが来て助けるのですが、コロナ全盛期に公開された映画だけに、妙にリアル感のあるシーンです。
飛ぶシーンはコウモリではなくムササビである
バットマンがビルの屋上から飛んで逃げるシーンは、コウモリの翼ではなく、現実にもあるウィングスーツを使っています。
つまりコウモリではなくムササビなんです。
とことんリアルにしたかったのでしょうが、どうせコウモリのコスプレした男が警察と組んでいるなどという荒唐無稽なことをやっているのだから、ここはコウモリの翼にしてほしかったところ。
失神したバットマンが警察官に囲まれるちょっと笑えるシーン
失神したバットマンが警察署に運ばれ、警察官たちに「マスクの下を見たい」などと言われています。
それに抵抗して何十人もの警察官相手に暴れるバットマン。
かなりシリアスなシーンですが、その光景に少しだけ笑ってしまいます。
キャットウーマンはコスプレ感あまりなし
本作のキャットウーマンの衣装はバットマンのようなガチ感はなく、黒いスキニースーツに顔は頭と鼻の部分だけが隠れるような、ちょっと猫耳っぽい突起が付いたマスクを被っている感じで、ただの顔を隠した怪盗かな?という印象で、コスプレ感はあまりありません。
というかこの『ザ・バットマン』で変なコスチュームを着ているのはバットマンだけで、悪役も含めて他の登場人物も外見的にはごく普通で、だからこそバットマンのコスプレ感が一層際立って見えます。
話も暗けりゃ画面も暗い
これは欧米作の映画、ドラマにはよくあることですが、画面に光があまりない、暗めの画面が非常に多いです。
ほぼ真っ暗な画面の中で、バットマンの顔の下半分だけが光っているなんて画面が非常に多い。
明るい部屋でテレビで観ていると画面が反射してとても見えづらいので、部屋を暗くして観るべき映画です。
1番笑ったシーン 「手袋をしてる」
警察が犯人の部屋を捜索しているシーンで、鑑識官?が
「いいんですか?(バットマンが)証拠に触れてる」
とゴードン警部補に聞くと、半ば強引にバットマンを警察の捜査に協力させているゴードンが
「手袋をしてる」
とシリアスに言う。
「そういう問題か?!」とつっこみたくなるシーンでした。
”持たざる者”の”持てる者”へのヘイトが根底にあるテーマ
リドラーの犯罪の動機は、”持てる者”だけで富を独占し、私腹を肥やし続けているゴッサムシティの政治家や権力者たちへのヘイトです。
すなわち、現代アメリカ社会が抱える最大の問題、「格差社会」の問題が、そのままこの映画のテーマとなっています。
いかにもな顔をしている現代版リドラー
「持たざる者」の代表である元孤児のリドラーの素顔は、昔の映画やアメコミのような緑色のスーツを身にまとった変な奴ではなく、いかにも頭脳的な犯罪を犯しそうな、あまりにリアルなサイコパスでした。
クライムサスペンスに無理やりヒーローを埋め込んでいる
これがこの(長い)映画を最後まで見終わった私の感想です。
この映画、クライムサスペンスとしてよくできていて、結構面白くはあるんですが、主人公は別にバットマンというヒーローじゃなくても成り立つんですよね。
最後の最後まで主人公がバットマンである必要性を感じなかった、そんな映画でした。
まとめ(バットマン映画は間違った方向に進んでいる)
この映画、完全にクリストファー・ノーラン監督のダーク&シリアス路線を踏襲していて、この路線が好きな人は好きなのでしょうが、私は個人的には嫌いですね。
80年代~90年代のコミカル路線のバットマン映画が面白かったか、と聞かれるとそれはそれで疑問ですが、今ならば、100%エンタメ路線で作っても、爽快感抜群のめちゃくちゃ面白いバットマン映画が作れるはず。
でも今更アメコミそのまんまのヴィランに出てこられても興ざめしてしまうので、ビジュアル的には今の路線がいいです。
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