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映画『ゆれる』をアマプラで観た感想・レビュー(ネタバレあり)

ゆれる」というこの印象的なタイトル。

いったい何が「ゆれる」のでしょうか。

落ちた」のか、「落とされた」のかをめぐるこのサスペンス映画。

アマプラで観た感想を書いていきたいと思います!

(ネタバレありでお送りします)

ゆれる

『ゆれる』

2006年 日本映画 上映時間 119分

監督   :西川美和

脚本   :西川美和

音楽   :カリフラワーズ

 

目次

 

あらすじ

故郷の田舎を離れ、東京で写真家として成功を収めていた主人公、早川猛。

母親の法事で久々に帰省した際、兄、稔と共に父親が経営するガソリンスタンドで働く昔の恋人、千恵子と再会し、一夜を共にする。

次の日、兄弟と千恵子の3人で、思い出の溪谷へと遊びに行く。

そして猛が写真を撮っていたとき、稔と2人でつり橋の上にいた千恵子が落下し、死亡する。

千恵子は「落ちた」のか、それとも稔に「落とされた」のか。

 

登場人物

早川猛   オダギリジョー

本作の主人公。

故郷の田舎を出て、東京で写真家として成功している。

高給取りで女性にもモテる。

 

早川稔   香川照之

猛の兄。

実家に残り、父親が経営するガソリンスタンドで働いている。

母親が亡くなってからは家事も全てこなし、厳格な父親の下で鬱屈した毎日を送っている。

同僚の千恵子に密かに思いを寄せている。

 

早川勇   伊武雅刀

猛と稔の父。

ザ・昭和の父親、という感じの無骨で厳格な性格。

自由奔放な猛の生き方をよく思っていない。

 

川端千恵子 真木よう子

高校時代の猛の恋人。

故郷の田舎に残り、猛の父が経営するガソリンスタンドで、稔と共に働いている。

田舎の生活に不満を持っていて、東京に強い憧れを抱いている。

 

岡島洋平  新井浩文

猛の父が経営するガソリンスタンドで、アルバイトとして働く青年。

 

早川修   蟹江敬三

早川勇の兄であり、弁護士。

稔の裁判で、弁護を担当する。

 

検察官   木村祐一

稔の裁判の検察官。

 

感想

主人公、猛の愛車「フォード・ファルコン」

序盤から登場する、古臭いインテリアの左ハンドル車、フォード・ファルコン。

エンジンのかかりが悪いのも、古いアメ車感を演出していていい感じです。

この個性的な車、主人公、猛の我が道を行く性格をよく表していると思います。

 

序盤の法事のシーンの演出がすごく良い

この映画、本題のサスペンスパートに入るまでの前置きが結構長いですが、演出が良くお話が面白いので、退屈することはないです。

 

特に序盤の法事で、皆で食事するシーン。

喪服も着ることなく法事にやって来て、奔放に振る舞う猛。

それに対して、来客者に対して女性のような細かい気配りを見せる兄の稔。

この時点で兄弟の対比がほぼ描かれているのが素晴らしい。

 

そして「写真家」という不安定で得体の知れない職業についている猛に対して、ちくちくと嫌味を言う父親、勇に対して猛がはっきり言い返し、勇が激怒するシーンは、かなり痛快で、家父長制の末裔のような勇のキャラを決定づけているシーンでもあります。

 

主人公、猛役のオダギリジョーはハマリ役

主人公、早川猛を演じたオダギリジョーは特別演技が上手いとは思いませんが、この役は本当にハマってると思います。

何がいいって、とにかく無責任なところ。

猛が千恵子を東京に連れていく、と言ったって、この映画を俯瞰して観ている視聴者には、それが口だけだとはっきりわかります。

オダギリジョーが演じる人物にはあらゆる言動に無責任さがつきまとい、それが主人公、猛のキャラにぴったりフィットしています。

 

「やめてよ、触らないでよ!」

不安定なつり橋の上ですがりついてきた稔に、千恵子が言い放った一言。

猛と共に上京するつもりだった千恵子。

その千恵子にとっては、つり橋の上で頼りなくすがりついてくる稔は、鬱屈したしがらみだらけの田舎生活そのもの。

千恵子が拒絶したかったのは、稔ではなく、その田舎生活そのものだったのかもしれません。

 

検察官というよりヤクザな木村祐一

どう見ても検察官ではなくヤクザにしか見えない木村祐一

こんな検察官も探せば中にはいるのでしょうが、リアリティはありません。

このキャスティングは何なのでしょうか。

 

感情的すぎる蟹江敬三演じる弁護士

蟹江敬三演じる弁護士、早川修は被告人である稔の叔父にあたる人物。

そこを考慮すると、裁判において多少感情的になってしまうのもわかると言えばわりますが、それにしても早川修は感情的すぎます。

リアリティよりも、映画としての盛り上がりを重視した結果の演出でしょうか?

 

逮捕されたことで「解放」された稔

中盤、稔が逮捕されたあとの猛と稔の面会シーンで、稔の印象的なセリフがあります。

まあ、あのスタンドで一生生きていくのも、この檻の中で生きていくのも、大差ないな~。バカな客に頭下げなくていいだけ、こっちのほうが気楽だ

稔にとって、田舎の実家に残り、絶対的権力を持つ家父長そのものの父の下で生きていくのは、監獄の中で生きているのとそれほど変わらない人生だったに違いありません。

その後、温厚だったはずの稔が猛を怒鳴りつけ、アクリル板を殴り、猛につばを吐きかけるなどの乱暴な行動をとったのも、「家」という名の監獄から解放されたからこそです。

 

結局この事件(事故)は壮大な兄弟げんかだった

結局千恵子がつり橋から落ちる(落とされる)という事故(事件)の原因となったのは、稔が長年思いを寄せていた会社の同僚の千恵子を、東京から法事で帰ってきただけの猛が、いとも簡単にかっさらっていったことです。

そして猛はそれに対しての責任もとろうとせず、千恵子を抱いたことを稔に正直に言うこともせず、また東京に逃げようとしている。

 

全てを手に入れて、無責任に東京に逃げていく弟への感情、そして好きな女性に長年尽くしても、できた弟に一瞬でかっさらわれる己への無力感、そうした稔の鬱屈した感情が引き金になり、この事故(事件)は起きました。

要はこの映画が描いているのは、法廷を巻き込んだ壮大な兄弟げんかであり、それに巻き込まれて若くしてその生涯を終えることになった千恵子は、本当に気の毒としか言いようがないですね。

 

終盤、普通の感動ものに収まってしまったのが少し残念

終盤、オダギリジョー演じる猛が昔の8mmフィルムを見て涙してからの展開は、それまでが緊張感ある素晴らしい演出だっただけに、最後は普通の感動ものの日本映画になってしまったな~と、少し残念に感じました。

 

賛否が分かれるラストシーン

最後どうなったかは視聴者にゆだねる。

映画では割とよくあるこの手のエンディングは、賛否が分かれ、「しっかり結末を描いてほしい!」という声も常に上がりますが、私は個人的にはこの手の終わり方は好きなほうですね。

 

ロケ地について

美しい渓流や、田舎の風景が印象的なこの映画。

つり橋のシーンは新潟県津南町の見倉橋で、その他のシーンは山梨県富士吉田市で撮影されました。

 

やらかし俳優たちが多数出演

やらかして、テレビや芸能界から姿を消した俳優たち。

香川照之新井浩文ピエール瀧

そしてまだ疑惑の段階ですが、エアガン疑惑の真木よう子

この映画、こうしたスキャンダラスな俳優たちが多数出演しております。

しかしここで名前を挙げた全員、演技はすごく上手いんですよね~。

新井浩文もこの映画では脇役ながら、存在感ある素晴らしい演技を見せてくれています。

 

まとめ

さて、法廷を巻き込んだ、壮大な兄弟げんかだったこの映画。

しかし自分よりも優秀で女にモテる、そして監獄のような家に縛られることもなく、東京というきらびやかな社会で自由に生きる弟に対する鬱屈した兄の感情。

それによって起きてしまった事故(事件)、そしてその後の兄弟の変化。

そうしたものが、よく描かれた、素晴らしいサスペンス映画でした。

まだ観ていない方は、アマゾンプライムビデオで是非!

 

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