クリスマスが近づくと観たくなるこの映画、何度も観ていますが、今年も観てしまいました。
改めて感想を書いてみたいと思います。
1946年 アメリカ映画 原題:It's a Wonderful Life
上映時間 130分
監督 :フランク・キャプラ
脚本 :フランク・キャプラ他
キャスト :ジェームズ・ステュアート ドナ・リード
予告編はこちら↓
目次
あらすじ
クリスマス・イブ、天国の大天使がまだ翼を持たない2級天使のクラレンスを呼び、ニューヨーク州のベドフォールズという町で絶望し、自殺を試みようとしているジョージ・ベイリーという男を救えと命じる。
ジョージは少年の頃から自分よりも他人の幸せのために行動するような人間だった。
ジョージの父は小さな住宅金融会社を経営していて、ジョージにその会社を継いでほしいと願っていたが、ジョージは大学に行き、もっと大きな仕事をする建築家になることを夢見ていた。
夢に向かって前向きに行動していたジョージだったが、父の死をきっかけにその夢は絶たれ、そしてある事件をきっかけに、ジョージは絶望へと突き進んでいくことになる。
「出来の悪い」2級天使クラレンスは、そんなジョージを救うために奔走する。
何度観ても人間の普遍的な温かさを感じる「永遠の名作」
予告編の映像でも"Timeless Masterpiece"(永遠の名作)という言葉が出てきましたが、本当にこの映画は何度観ても感動できる名作だと思います。
その感動はよくあるお涙頂戴ものの安っぽいものではなく、真に心からの人の優しさや思いやりに触れたときの、心が温まるようなあの感動です。
感想
前半は少し冗長に感じるかも
2時間超の長い映画であり、主人公ジョージ・ベイリーという人物を少年時代からじっくりと描いていくので、前半はやや冗長に感じる部分があるかもしれません。
序盤は明るく楽しい
主人公の絶望を描く作品ながら、序盤は予想外に明るく楽しいシーンが続きます。
ダンスパーティから皆がプールに飛び込むシーンなどは本当に楽しいシーンです。
月を捕まえる
若き日のジョージ、メアリーを口説く際に「君の願い事はなんだい?月が欲しいのか?だったら投げ縄を投げてつかまえてみせる」と言います。
野心あふれる若者が抱きがちな全能感を表すいいセリフですが、このセリフはのちに額縁に飾られてベイリー家に飾られることになります。
徹底して他者のために尽くす男
父親が亡くなったあと、主人公ジョージは父の会社の存続のため、自分の大学進学をあきらめ、父の会社を継いで社長になり、そして自分の学費を弟に譲り、大学に行かせます。
ジョージの父は貧しい人々が家を持てるように利益度外視で融資をする金融会社を経営しており、ジョージは父の会社を継ぐと同時に、貧しい人々のために生きた父の精神も受け継いだ形になります。
ジョージは弟が大学を卒業したあと父の会社の社長を引き継いでもらうつもりでしたが、弟の将来を優先し、それも諦めることになります。
明るく楽しい雰囲気から、徐々にジョージの苦悩の表情が増えていきます。
夢は諦めたが、運命の女性を手に入れるジョージ
ジョージは大学に行って大建築家になるという夢は諦めましたが、少年時代からの知り合いで、彼のことを輝く瞳で見つめ続けてきた運命の女性メアリーと結婚します。
彼女の家に行くも素直になれず、ケンカになってしまう展開も面白かったです。
ボロ家で新婚生活をスタートするジョージ夫妻
昔からジョージの会社を疎ましく思っていた富豪のヘンリーの策略によって起こった取り付け騒ぎによって、新婚旅行の費用2000ドルを貧しい人々に貸して失ってしまったジョージ。
妻メアリーが指定した住所を訪れると、雨漏りやクモの巣だらけのボロ家に、妻が暖炉に火を焚いて温かい笑顔で待っていました。
その後、4人の子供に恵まれた夫妻は、貧しいながらも幸せな生活を送り、住宅金融の仕事も軌道に乗り、法外な家賃で荒稼ぎしていた富豪ヘンリーの客を、徐々に奪っていくことになります。
現在の年収の10倍近いオファーを断るジョージ
客をどんどん奪われていく富豪ヘンリーは、敵を味方に引き入れる作戦に出ます。
現在の年収二千ドルちょっとのジョージに対し、約10倍の年収二万ドルで自分の会社で雇おうと言うのです。
さすがのジョージも一瞬迷います。
それだけのお金があれば、妻にも子供たちにも、豊かな暮らしをさせてあげることができる。
しかしヘンリーと握手を交わした後、正気に戻ったかのようにジョージはオファーを断ります。
「自分中心に世界が回ってると思ったら大間違いだぞ。この広い宇宙ではあんたなんかただの虫ケラだ!」
そして運命の出来事が
そしてついにジョージの絶望を決定づける出来事が起こります。
もの忘れの激しいジョージの叔父ビリーが会社の金8000ドルを銀行に預けるために出かけたが、その金を紛失し、あろうことか富豪のヘンリーの手に渡ってしまうのでした。
家族に八つ当たりするジョージ
会社の廃業が決定的になり、絶望の中家に帰ると、家族は対照的に幸せの中でクリスマスの準備をしていました。
そんな中で不機嫌に家族に当たり散らすジョージ。
父親の異変を察知し、なんとか元に戻ってもらおうと働きかける子供たちの姿が痛々しいです。
全てが悪い方向へ進んでいく
これは現実でも同じですが、自暴自棄になっているときというのは全てが悪い方向に進み、周りの人間全員が敵に見えてきます。
やけになり酒場で酒をかっくらい、神に祈ったのに殴られる。
飲酒運転をして事故を起こし、家の持ち主にののしられる。
そして絶望の中、ジョージは橋の上から荒れ狂う川を見下ろします。
ようやく登場する2級天使
映画を約1時間40分ほど見てきてようやくここでこの映画のもう一人の主人公ともいうべき、2級天使のクラレンスが登場します。
彼はジョージに自殺させないために、ジョージより先に川に飛び込み、ジョージによって助けられます。
「もしジョージが存在しなかったら」の世界へ
ここまで普通の人間ドラマだったこの作品が、ここで大きく転換し、ファンタジーへと移行します。
2級天使クラレンスの能力によって、ジョージは「もしジョージ・ベイリーが生まれなかったら」の世界へ行くことになります。
「ジョージが存在しなかったら」の世界では、町の名前が「ベッドフォード・フォールズ」から「ポッターズビル」に変っています。
「ポッターズビル」つまり、富豪ヘンリー・ポッターに支配された町です。
「ポッターズビル」は「ベッドフォード・フォールズ」とは大きく異なり、バーやキャバレーなど、夜の店ばかりの治安の悪い町へと変貌しています。
ジョージの住宅金融会社はとっくの昔に廃業し、ダンスホールになっていて、ジョージの家は廃墟と化しています。
ジョージの母は下宿を経営していて、もちろんジョージのことを知らず、そして明らかに人相が悪くなっています。
そしてきわめつけはジョージの妻メアリー。
いまだ独身で、あの美貌はどこへやらという感じの地味~な服装で図書館で働いています。
ジョージが必死に「僕は君の夫だ!」と呼び掛けても、怖がられて悲鳴を上げられる始末です。
メリークリスマス!!
ジョージは自殺を考えていた橋の上に戻ると、「全てを元に戻してほしい」と神に祈ります。
すると世界は元に戻り、ジョージは大喜びで、出会う全てのものに「メリークリスマス!!メリークリスマス!!」と呼び掛けながら家路を急ぎます。
自分の人生は本当は素晴らしいものだったことに気づき、再会した全てのものに対し歓喜するこのシーン、最高すぎます。
最高すぎるラストシーン
もう映画史上最高のラストシーンと言ってもいいのではないでしょうか。
ジョージが家に戻ると、出迎えてくれた4人の子供たちを抱きしめます。
いることがあたりまえだった子供たち。
しかし「自分が存在しなかった世界」を経験した今、子供たちが存在するということがどんなにすばらしいことなのかをかみしめるようなジョージの笑顔が感動的です。
心配してジョージを探しに外に出ていた妻メアリーとも再会。
最高の家族の再会シーンです。
そして今までジョージに助けられてきた人々が次から次へと家に入ってきて、ジョージが困っているならと次から次へと金を寄附し、必要だった8000ドルをはるかに上回る金額が集まります。
その中にはジョージの少年時代にジョージに助けられた薬屋の主人もいて、このラストシーンにたどり着くまでに見てきた、長い長いジョージの半生の描写が、必要な伏線だったことがわかるのです。
ジョージがふと寄附金の山を見るとその上にはいつの間にかトム・ソーヤーの冒険の本が。
その本を開くと、「翼をありがとう」の言葉が。
2級天使のクラレンスはジョージを救った功績を認められ、翼を得たのでした。
最後は足の踏み場もないほどに集まった人々全員で、「蛍の光」を合唱し、人生の素晴らしさをかみしめるジョージの満面の笑顔の中、映画は幕を下ろします。
やはり最高すぎる映画でした。
まとめ
この映画は百点満点の映画ではないと思います。
前半だけ観て「つまんね」と思って観るのをやめた人も多数いるでしょう。
しかしこの最高のラストシーンを観たあとの、この感動はなんなのでしょうか。
あたりまえのように存在してたこの日常が、この人生が、こんなにも素晴らしいものだったのか、と気づいたときのジョージの笑顔に、誰もが心動かされてしまう傑作映画だと思います。
まだ観ていない方は、クリスマスのこの機会に是非!!
個人的評価 (文句なしの)10/10
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