空飛ぶ車が飛び交う近未来的な文明世界の中、甲冑を身にまとい、剣で戦う騎士という職業が存在する不思議な世界。
自由自在に色々な生物に変身し、大暴れする少女ニモーナと、女王殺しの濡れ衣を着せられた真面目な騎士バリスターのコンビが活躍するNetflixアニメ映画『ニモーナ』。
アニー賞とアカデミー長編アニメ映画賞にノミネートされ、高評価のこの作品、観た感想を書いていきたいと思います!
(若干のネタバレあります)
『ニモーナ』
2023年 アメリカ 原題:Nimona
上映時間 約100分
推奨年齢 10歳以上
監督 :ニック・ブルーノ トロイ・クアン
原作 :ND・スティーブンソン
(声の出演)
ニモーナ :クロエ・グレース・モレッツ
アンブロシウス :ユージン・リー・ヤン
校長 :フランセス・コンロイ
トッド :ベック・ベネット
女王 :ロレイン・トゥーサント
予告編はこちら↓
目次
あらすじ
女王殺しの濡れ衣を着せられた騎士、バリスターは、自由自在に変身できる能力を持つ少女、ニモーナと手を組んで真犯人探しに乗り出す。
アニー賞脅威の9部門ノミネート、アカデミー長編アニメ映画賞にもノミネート
日本では全く話題になっていないこの作品ですが、第51回アニー賞に9部門もノミネートしています。
1. Best Feature (長編アニメーション作品賞)
14. Best Character Animation - Feature (キャラクターアニメーション賞長編アニメ部門)
18. Best Character Design - Feature (キャラクターデザイン賞長編アニメ部門)
20. Best Direction - Feature (監督賞長編アニメ部門)
24. Best Production Design - Feature (美術賞長編アニメ部門)
26. Best Storyboarding - Feature (ストーリーボード賞長編アニメ部門)
28. Best Voice Acting - Feature (声優賞長編アニメ部門)
30. Best Writing - Feature (脚本賞長編アニメ部門)
32. Best Editorial - Feature (編集賞長編アニメ部門)
この『ニモーナ』は長編アニメ部門ですので、アニー賞の各部門を日本作品の『君たちはどう生きるか』と『すずめの戸締まり』と直接争うことになります。
そして第96回アカデミー賞の長編アニメ映画賞にもノミネート。
こちらは宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』、ディズニー映画の『マイ・エレメント』などと争うことになります。
第51回アニー賞の授賞式は2024年2月17日、第96回アカデミー賞の授賞式は3月11日に予定されています。
結果が楽しみですね。
第51回アニー賞の結果
2024年2月17日(現地時間)に第51回アニー賞の授賞式が行われ、この「ニモーナ」は
28. Best Voice Acting - Feature (声優賞長編アニメ部門)
30. Best Writing - Feature (脚本賞長編アニメ部門)
の2部門の受賞となりました。
今回のアニー賞の長編アニメーション部門は「Spider-Man: Across the Spider Verse」が7部門受賞と圧倒的に強かったですね。
この結果がアカデミー長編アニメーション賞にも直結するのか、それとも「ニモーナ」や日本作品の巻き返しはあるのか。
3月11日の授賞式を楽しみに待ちたいと思います。
第96回アカデミー賞の結果
第96回アカデミー長編アニメーション賞は、日本作品の「君たちはどう生きるか」が受賞しました。
アニー賞で圧倒的に強かった「Spider-Man: Across the Spider Verse」から、巻き返した形になりましたね。
「ニモーナ」にとっては、残念な結果でした。
感想
不思議な世界観
空飛ぶ自動車が飛び交うほど文明が発展しているのに、甲冑を身にまとい、剣で戦う「騎士」という職業が存在する、不思議な世界観です。
"He's perfect."から始まるかっこいいオープニング
何者かの差し金で、女王殺しの汚名を着せられてしまった騎士、バリスター。
そのニュースを流しているビルの広告塔の画面を見ている、主人公のニモーナ。
そのニュースの中ではアナウンサーが
"He's a murderer."(彼は殺人者だ)
"He's a monster."(彼は怪物だ)
などと言っていますが、それを聴いているニモーナがニカッと笑って、
"He's perfect."(完璧じゃん)
と言ってオープニングクレジットへ。
黒背景に白文字で"NIMONA"の表示だけ、と非常にシンプルで地味なオープニングですが、かわいい少女のニモーナの笑顔がちょっと邪悪な感じで、それがとてもかっこいいです。
ニモーナの手足が太い!
女王殺しの汚名を着せられて、ボロ家に隠れ住んでいる騎士、バリスターの元に押しかけてきて、典型的なアメリカンガールのように元気いっぱいに喋りまくるニモーナですが、すぐ気になったのが手足が太目のニモーナのキャラクターデザイン。
日本のアニメでは主人公の少女がこんなに手足太目なキャラデザは見たことがないし、ディズニーのヒロインなどでもあまり見たことがありません。
このデザインは単に製作者の趣味なのか、それともストーリーに関わってくるのか、ちょっと気になります。
自在に変身するイービル(悪)属性のヒロイン
サイに始まり、熊、ゴリラ、ダチョウ、クジラなど、様々な形態に自在に変身する能力を持つニモーナ。
何に変身しても、サーモンピンクのような色なところが特徴です。
そして「殺人」「拷問」など、悪事となると目を輝かせるニモーナ。
ディズニーアニメ的な絵柄ながら、ディズニーではありえない邪悪なヒロインの設定が痛快です。
牙のように生えている八重歯も、悪のヒロインぶりを感じさせます。
朴訥で真面目なバリスターと破天荒なニモーナのコンビが楽しい
女王殺しの濡れ衣を着せられて、逃亡生活を送るバリスターの性格はかなり生真面目。
悪事といたずら大好きで、片時もじっとしていられない元気いっぱいで破天荒なニモーナとの凸凹コンビぶりが楽しいです。
LGBT要素あり
映画、ドラマなどにLGBT要素を入れるのは最近のアメリカの流れですが、日本人にはまだまだ受け入れられていません。
この作品にはLGBT要素が入っていますが、個人的には不快に感じるレベルではないと思いました。
痛快なアクションシーン
文字通りに変幻自在なニモーナと、ニモーナがいなくても十分に百人力の強さを持つ騎士のバリスター。
この2人が騎士団相手に繰り広げるアクションシーンの数々は痛快の一言。
同じくアクションシーンが圧倒的だった、Netflixアニメの『ブルーアイサムライ』と比較して、あちらが成人向けのバイオレンスアクションなのに対し、こちらは子供でも見られる楽しい痛快アクションとなっています。
終盤、怒涛の展開に
過去のトラウマから感情を爆発させたニモーナがモンスター化し、終盤、怪獣映画的怒涛の展開に。
クライマックスの演出は少しあっさり過ぎるかな、という印象でした。
実質85分の映画
この映画、エンドロールがやたら長いので、実質は85分程度の長さの映画でした。
まとめ(傑作ではないが楽しく観れる良作アニメ映画)
イービル属性のヒロインが大暴れするこのアニメ映画、アニー賞9部門ノミネートとアカデミー長編アニメ映画賞ノミネート、ということでかなり期待して鑑賞しましたが、個人的にはそこまでの傑作だとは思いませんでした。
しかし主人公ニモーナのいわゆる「萌え」とは全く違うベクトルの可愛さ、痛快なアクションシーン、ほっこり感動できるストーリーなど、十分に楽しめるエンタメ作品でした。
まだ日本では全く受け入れられていないLGBT要素があるので、そこで「おやっ」となる人は結構いるかも。
宮崎駿監督作品の『君たちはどう生きるか』とは違い、芸術性や、「深さ」などはあまり感じず、シンプルなエンターテインメントといった印象のこの作品、そのあたりがアニー賞やアカデミー賞の結果にどう影響してくるのか、結果を楽しみに待ちたいと思います!
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