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【元祖にして至高のラブコメ】映画『或る夜の出来事』の感想・レビュー

あの誰もが知る名画『ローマの休日』や『卒業』にも影響を与えたと言われる、このロマンティックコメディ。

もう何度観たかわからないくらいお気に入りのこの映画、1934年公開の極めて古い映画ですが、今回あらためてアマプラで視聴して、やはり元祖にして最高のラブコメ映画だと確信しました。

私はこの最高の映画を1人でも多くの人に観てもらいたいと思っているので、この映画の素晴らしさを、渾身の力で書いていきたいと思います!!

(ネタバレはありますが、それはこの映画の魅力を損なうことにはなりません!)

或る夜の出来事(字幕版)

或る夜の出来事

1934年 アメリカ映画 原題:It Happened One Night

上映時間 約105分

監督   :フランク・キャプラ

脚本   :ロバート・リスキン

キャスト :クラーク・ゲーブル クローデット・コルベール

 

目次

 

あらすじ

富豪の令嬢エリー(クローデット・コルベールは、プレイボーイの飛行士キング・ウェストリーとの結婚を父親に反対され、ヨットの上でハンガーストライキで抵抗していたが、業を煮やし、ヨットから海に飛び込み、脱走した。

そしてウェストリーに会うため、マイアミからニューヨークへの夜行バスに乗るが、そこで特ダネを狙う新聞記者のピーター・ウォーン(クラーク・ゲーブルと乗り合わせることになる。

世間知らずのエリーを導くように接するピーター。新聞社をクビにされていたピーターは、エリーの愛の逃避行を自分だけの特ダネにすることで、再起を図ろうとしていた。

ぶつかり合いながらも、次第に惹かれ合っていく、2人の逃避行が始まる。

 

フランク・キャプラ監督について

イタリア・シチリア島出身でアメリカで活躍した映画監督。

この『或る夜の出来事』、『オペラハット』、『我が家の楽園』でアカデミー監督賞を3度受賞した、白黒時代のアメリカ映画を代表する監督である。

クリスマス映画として今も語り継がれている『素晴らしき哉、人生!』も彼の作品。

 

アカデミー賞主要5部門を総なめ

第7回アカデミー賞において主要5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)全てにノミネートし、5部門とも受賞という快挙をなし遂げた映画である。

 

90年前の映画をあえておすすめする理由

テンポがよく、無駄なシーンがまるでない

この映画を観ていてまず思うのは、冒頭から非常にテンポがよく、無駄なシーンや退屈なシーンがまるでない、ということです。

この映画は現代の映画と比べると比較的短い、約105分の映画ですが、その105分に面白いシーンだけをひたすら詰め込んだ、そんな印象の最高の娯楽映画です。

 

キャスティングが完璧

勇敢で行動力抜群だが、頑固で自己中心的なところがある新聞記者ピーター・ウォーンを演じたクラーク・ゲーブル

世間知らずの富豪の令嬢、エリー・アンドリュースを演じたフランス出身の女優、クローデット・コルベール

どちらもコメディのセンスがあり、俳優として魅力的で、完璧なキャスティングだと思います。

 

とにかく楽しいシーンの連続

ダメ夫婦を装って探偵を出し抜くシーン。

夜行バスの中で、見知らぬ乗客同士で楽しく歌い踊るシーン。

映画史上に残る名場面である、エリーのヒッチハイクシーン。

そしてエリーが結婚式から逃げるシーン。

とにかくこれでもかというほど楽しいシーンが詰め込まれている映画で、それでいて、現代の映画のような殺伐としたシーンや露骨なベッドシーンなどいっさいなく、平和に見ることができる、本当に幸せな映画です。

 

ジェリコの壁」というギミック

ジェリコの壁」とは、聖書に書かれている、ヨシュアが角笛を吹いて崩したとされている壁のことですが、この作品ではピーターとエリーが逃避行の中で経済的な理由で、2人で1つの部屋に泊まる際に互いのプライバシーを守るために、ピーターがベッドとベッドの間にロープを張ってそれに毛布をかけ、それを「ジェリコの壁」と名付ける、というギミックとして使われています。

 

伝説のヒッチハイクシーン

逃避行の中、バスを使えなくなった2人がヒッチハイクしようとするシーン。

ヒッチハイクの本を出そうかと思ってるところだ」

と自慢げにエリーにヒッチハイクのやり方をレクチャーするピーターですが、どんなやり方をしても車は停まってくれません。

そこでそれまでピーターにリードされてばかりだったエリーが、ここで挽回、とばかりに自分のスカートの裾をまくって脚を見せると、一発で車は停まります。

その後のピーターの機嫌の悪そうな顔までの流れが、とにかく楽しい最高のシーンです。

 

2人が1度別れてからハッピーエンドまでの流れが最高

恋愛ものではよくある作劇法で、後半に1度2人の関係はダメになるのかなと視聴者に思わせておいて、そこから関係を修復し、2人が結ばれるハッピーエンドに持って行く、という手法がありますが、その手法がこの作品にも使われていて、見事に機能しています。

映画界においては、この作品が今日まで続く恋愛ものの元祖的作品なのかもしれませんね。

 

本当は愛し合っているのだが、すれ違いが原因で別れた2人。

エリーは予定通りキザな飛行士のキング・ウェストリーとの結婚式を挙げることになりますが、本当は愛していないウェストリーに対し、「メリーゴーラウンドみたいな楽しい人生にしましょう」などと言い、自分は幸せなのだと思い込もうとするように、ポジティブな言葉をしゃべりまくる痛々しいエリーの描写が素晴らしいです。

その後誤解が続いたまま、アンドリュース家でエリーとピーターが顔を合わせるシーンも完璧な演出で最高です。

 

その後無駄なシーンを挟むことなく一気に結婚式に飛ぶのも最高。

現代の映画もこれくらいテンポよく行ってほしいものです。

 

結婚式から逃げ出す花嫁

この映画の最も痛快なクライマックスシーン。

本当はエリーとピーター、お互いが深く愛し合っていることを知ったエリーの父親が、バージンロードを2人で歩いているときにそのことをエリーに告げ、「お前がその気なら、裏に車を用意してある」と言い、エリーが誓いの言葉を言う前に、結婚式から走って逃げだすシーン。

最高です。

自分の娘の幸せを願って逃げ道を用意しながらも、強引にやるのではなく、最後は娘の意思にまかせる父親も最高ですよね。

ちなみにこのシーンは、ダスティン・ホフマン主演の名画『卒業』にも影響を与えたと言われています。

 

この作品の欠点

ありません。

本当に1つとして欠点がないからこそ、至高の映画なのです。

 

気になった点

欠点ではなく、時代の違いによって、気になった点、これから観る方が気になるであろう点をいくつか挙げてみたいと思います。

タバコ吸いまくり

あらゆるキャラクターが(ヒロインのエリーも)タバコ吸いまくりで、そしてその辺に捨てまくりです。

これはこの時代の常識でしたので仕方がないですが、やはり現代人から見ると気になるところです。

 

主演の2人のキスシーンがない

恋愛ものではもはや必須、といえる主役2人のキスシーンがありません。

なぜかエリーとキング・ウェストリーのキスシーンはあります。

名画『ニューシネマパラダイス』では、キスシーンを淫らだと言ってカットするシーンがありましたが、戦前はそういう厳格な時代だったのかもしれませんね。

 

ハッピーな映画ながら治安は悪い

この『或る夜の出来事』は、殺伐としたシーンがまったくない、ハッピーな映画ではありますが、エリーが無防備にタバコを吸っている間にカバンを盗まれたり、ヒッチハイク強盗がいたりと、かなり治安の悪い社会であることがわかります。

しかしそれを深刻に描かないところが、この時代の映画の素晴らしいところだと思います。

 

或る夜の出来事』が影響を与えた主な映画

ローマの休日

逃げ出した王女と特ダネを狙う新聞記者との、身分違いの恋、という設定。

 

卒業

主人公が結婚式を妨害し、花嫁と一緒に逃げるラストシーン。

 

ルパン三世カリオストロの城

クラリスカリオストロ伯爵の結婚式を妨害し、クラリスをかっさらうルパン。

ヘリコプターと飛行機が合わさったような「ジャイロコプター」の登場。

 

まとめ

この記事の中で、「最高」「至高」という言葉を何度書いたことでしょうか。

数えることはしませんが、それくらい「最高」であり、「至高」の映画だということを伝えたかったのであります。

個人的には、あらゆる映画の中でこの映画がベストワンです。

 

映画の内容を伝える言葉には「感動する」だとか「興奮する」だとか「ワクワクさせられる」など、色々な表現がありますが、この映画を一言で表現するとすれば

幸せな気持ちになれる

という表現が最もふさわしいのではないでしょうか。

 

とても古い映画なので、あえて観るのに抵抗がある、という気持ちはわかりますが、だまされたと思って観てみてください!

私が人にこんなにも勧めたいと思える映画は、他にはありません。

 

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