ナオーキのなんでもレビュー

主にネトフリ、アマプラで見た映画やドラマをレビューしていきます!

【期待以上の面白さ!】Netflix映画『ダムゼル』の感想・レビュー

世界的大ヒットNetflixドラマ『ストレンジャーシングス』で一躍名をはせた女優、ミリー・ボビー・ブラウンが主演するNetflixオリジナルファンタジー映画『ダムゼル/運命を拓きし者』。

ドラゴンのいけにえに捧げられる姫、彼女を救い出すのは・・・!

期待以上の面白さだったこのファンタジー映画、その面白さを、詳細に解説していきたいと思います!

(若干のネタバレがあります)

ダムゼル 運命を拓きし者 (創元推理文庫)

『ダムゼル/運命を拓きし者』

2024年 アメリカ映画(Netflix映画) 原題:Damsel

上映時間 107分

推奨年齢 13歳以上

監督   :ファン・カルロス・フレスナディージョ

脚本   :ダン・マゾー

 

目次

 

あらすじ

飢饉に苦しむ北の国の王女「エロディ」。

彼女は豊かな国、アウレア王国のヘンリー王子との結婚が決まり、新しい生活に期待と不安を抱いていた。

婚姻の儀式のあと、エロディはアウレア王家の伝統の儀式を行うため、溪谷の橋の上に連れられてくる。

その伝統の儀式とは、他国の王女をドラゴンのいけにえに捧げることだった。

 

登場人物

エロディ/ミリー・ボビー・ブラウン

飢饉に苦しむ北の国の王女。

民を救うため、アウレア王国の王子であるヘンリーと結婚することになる。

 

ベイフォード卿/レイ・ウィンストン

エロディの父。

娘がドラゴンのいけにえに捧げられることを知りながら、娘をアウレア王家に嫁がせる。

 

レディ・ベイフォード/アンジェラ・バセット

エロディの継母。

継母ながら娘たちを実の子のように思っている優しい女性。

 

ヘンリー王子/ニック・ロビンソン

アウレア王国の王子。

根は悪い人間ではないが、母であるイザベル女王には逆らえない。

 

イザベル女王/ロビン・ライト

アウレア王国の女王。

アウレア王国の最高権力者。

 

フロリア/ブルック・カーター

エロディの妹。

姉のようなたくましさはなく、女性的な性格。

 

タイトルの「ダムゼル」ってどういう意味?

「ダムゼル」は英語で書くと「Damsel」。

「乙女」や「若い未婚の女性」を意味する言葉です。

西洋の物語の型として「Damsel in distress」というものがあり、苦境にある乙女を王子様などが救出する、おとぎ話などによくある物語の典型的な型のことです。

古くはギリシャ神話における、美女アンドロメダを救い出す、英雄ペルセウスの物語。

そして主人公ルークが囚われのレイア姫を救出するというストーリーの『スターウォーズ』第一作も、典型的な「Damsel in distress」です。

 

さて、本作『ダムゼル/運命を拓きし者』がどういう話かいうと、もちろん「Damsel in distress」などではなく、「Damsel/乙女」である主人公エロディが、自らの力で「Distress/苦境」を切り抜ける、そういう意味を込めてこのタイトルを付けたのだと思われます。

 

感想

冒頭、いきなりのドラゴン戦

オープニング、王らしき男性と十数人の兵士が洞窟の中でいきなりのドラゴンとの戦闘。

ここではドラゴンの姿は明らかにはなりませんが、巨大かつ圧倒的に強いということははっきりわかります。

ドラマ版『ウィッチャー』のシーズン1に出てきたしょぼいドラゴンとは明らかに違い、これはかなり期待できるドラゴンです。

 

美術は悪くないが、CGに頼りすぎ感も

城や風景などは大部分がCGだと思われます。

悪くないのですが、時折ゲームの映像のように見えるシーンもあります。

 

ファンタジー世界には微妙にハマっていないミリー・ボビー・ブラウン

本作では北国のお姫様役のミリー・ボビー・ブラウン

19世紀のイギリスを舞台に、名探偵シャーロック・ホームズの妹を演じたNetflix映画『エノーラ・ホームズの事件簿』ではかなり役にハマっていた彼女ですが、本作ではどうか。

ビジュアルも演技(表情の作り方など)も、アメリカンガールという感じ(彼女はイギリス人なのだが)がして、ファンタジー世界には微妙にハマっていない印象のミリー。

欧米制作のファンタジー作品特有の重苦しい雰囲気は一切なく、どうも本格ファンタジーというよりはおとぎ話感が否めません。

 

部屋を暗くして視聴することを推奨

欧米作のファンタジーではよくあることですが、特にドラゴンの洞窟のシーンなど、画面が暗すぎて部屋が明るいと何をやっているのか全然わかりません。

部屋を暗くして視聴することをオススメします。

 

中盤は主人公エロディのサバイバルが描かれる

物語中盤、異国の王子様と結婚し、幸せな日々が訪れるはずが、ドラゴンのいけにえに捧げられてしまう主人公エロディ

強すぎるドラゴンに対して戦う術はなく、そこから先はひたすらエロディのサバイバル物語になります。

残酷描写などはありませんが、エロディの脚の傷は見ててけっこう痛そうです。

 

開始約70分でついにドラゴンがその全貌をあらわに!

開始約70分のところでオープニングのドラゴン戦の内実が語られ、ついにドラゴンがその姿をあらわにします。

かっこいいのですが、想像よりもスリムで、スマートな印象のデザインです。

爬虫類感はほとんどなく、中国の伝説上の動物の「麒麟(きりん)」のようなデザインですね。

顔はかなり怖く、流暢に英語をしゃべります。

 

ドラゴンの倒し方に説得力がある

ちょっと前まで剣を握ったこともなかったお姫様が、独力で、しかも剣1本でドラゴンを倒してしまったらどうしようかと思っていましたが、なるほどという倒し方で、説得力がありました。

それにしても主人公エロディはちょっと強すぎだとは思いますが。

 

痛快すぎるラストシーン!

最後の最後は見ている者全てが(よほどのひねくれ者でない限りは)こうなって欲しいと思っていたであろう展開に!

これぞエンタメ!これぞ娯楽映画!

娯楽映画はやはりこうでなくては!

 

現代風のおとぎ話

この作品を最後まで観た感想は、これは『ウィッチャー』や『ゲーム・オブ・スローンズ』のような本格ファンタジーとは全く異なる、「現代風のおとぎ話」だという印象です。

女性が救われるのではなく、自ら苦境を乗り越え英雄になる、という物語は、伝統的なおとぎ話の型「Damsel in distress」に対するアンチテーゼ感もあります。

 

まとめ(期待以上の面白さ!)

Netflixオリジナル映画、ということで、あまり期待せずに観ましたが、107分の上映時間が短く感じるほど面白いファンタジー映画でした!

強すぎる主人公など、つっこみどころはありますが、そこは娯楽映画ということで目をつむりましょう。

「細けえことはいいんだよ!」とばかりに細かい粗は無視して突き進み、100%エンタメに振り切った快作と言えるでしょう。

Netflixに加入している方には、絶対おすすめのエンターテインメント映画です!!

 

視聴はNetflixで!!

 

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【ライオンVSおじさん】映画『ビースト』をアマプラで観た感想・レビュー

「ライオンVSおじさん」の白熱バトル!

密猟者に家族を殺され、人間に対する憎悪の塊と化したモンスターライオンと、家族を守るために命を懸けるおじさんとの熱き戦い!

ライオン版『ジュラシックパーク』とも言うべきこのモンスターパニック映画を、ネタバレなしで徹底レビューしていきます!

ビースト (字幕版)

『ビースト』

2022年 アメリカ映画 原題:Beast

上映時間 93分

監督   :バルタザール・コルマウクル

脚本   :ライアン・イングル

音楽   :スティーヴン・プライス

 

目次

 

あらすじ

妻に先立たれた医師のネイトは、2人の娘たちを連れて、妻の故郷である南アフリカに長期旅行にやってきた。

そこで彼らは密猟者に家族を殺され、人間に対する憎悪の塊の「モンスター」となったオスライオンに襲われてしまう。

ネイトは2人の娘を守るため、命を懸けてモンスターライオンに立ち向かう!

 

登場人物

ネイト・サミュエルズ イドリス・エルバ

アメリカ合衆国在住の医師。

妻をガンで亡くし、2人の娘を連れ、妻の故郷である南アフリカにやってくる。

勇敢で家族思いだが、反抗期の長女メレディスの態度に手を焼いている。

 

メレディス(メア)・サミュエルズ イヤナ・ハーレイ

ネイトの長女。

フィルムカメラが趣味。

父との関係はぎくしゃくしている。

 

ノラ・サミュエルズ リア・ジェフリーズ

ネイトの次女。

心理学に興味を持っている。

 

マーティン・バトルズ シャールト・コプリー

ネイトの友人。

ライオンマスターで反密猟者。

 

感想

ジュラシックパーク』を彷彿とさせる舞台設定

成人男性が子供2人を守るために戦う、という舞台設定が、あの名作パニック映画「ジュラシックパーク」を彷彿とさせます。

中盤に家族3人が車の中にいるところをモンスターライオンに襲われる展開がありますが、そのあたりの演出も、「ジュラシックパーク」的です。

オマージュなのか、序盤に主人公の長女が「ジュラシックパーク」のロゴ付きタンクトップを着ているシーンがありますね。

 

開始約27分でホラー展開スタート

この映画は開始約27分の時点で、モンスターライオンに皆殺しにされた村が描写され、ホラー展開がスタートします。

死体に群がるハエの羽音がリアルで良いです。

約90分の映画で、27分の時点でホラー展開スタートは少し遅いかもしれません(『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は開始約6分半でホラー展開スタート(笑))が、そこまでの展開も決して視聴者を退屈させることなく、伏線もしっかり張ってます。

 

2人の子役の「怯え」の演技が良い

男性よりも恐怖をストレートに表現する、女性や子供を主要人物に使うのはホラー映画の定石ですが、この映画でも、それが見事に成功しています。

2人とも、素晴らしい「怯え」の演技。

しかし、ただ怯えているだけではなく、時折勇気を振り絞って行動するのもよい演出だと思います。

 

ライオンよりもワニが心配になるシーン

中盤、主人公ネイトがモンスターライオンから隠れるために水に浸かるシーンがありますが、正直ライオンよりも、水に潜んでいるワニに襲われないか心配になりました。

 

「視聴者をハラハラドキドキさせること」その一点に集中している王道的演出

この作品はモンスターパニック映画として、奇をてらうということが全くない、極めてオーソドックスな演出ですが、それが完璧に成功しています。

王道演出というのはいわばテンプレートですが、優れているからこそテンプレートになるのだな、ということが、この映画を観るとわかります。

 

映画『ビースト』のライオンは本物?

この映画にはモンスターライオン以外にも、複数のライオンが登場し、超リアルで、人間と抱き合うシーンなどもありますが、これらのライオンは全てCGによるもので、本作では本物のライオンは使われていません。

 

まとめ(ライオン版「ジュラシックパーク」!)

ライオン版「ジュラシックパーク」とも言うべきこのモンスターパニック映画。

残念ながら歴史的名作「ジュラシックパーク」には遠く及びませんが、それでも王道的演出で本当によくできた、良作パニック映画だと言えます。

約90分と短めなのも、最近は3時間近い映画も多い中で、素晴らしいポイントですね。

何も考えず、ハラハラドキドキしたいなら、かなりおすすめの映画です!

まだ観ていない方は、アマゾンプライムビデオでぜひ!

 

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【つっこみどころ満載】ドラマ『鵜頭川村事件』を観た感想・レビュー(ネタバレなし)

エイキチが来る

妻、仁美はそう言って失踪した。

災害によって孤立した鵜頭川村を舞台に繰り広げられる、愛憎渦巻く人間ドラマ。

傑作「死刑にいたる病」の櫛木理宇の原作小説をドラマ化したこの作品の感想を、忖度なしでしていきます!

(ネタバレなしのレビューです)

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『鵜頭川村事件』

2022年 日本 全6話 各話約45分

監督   :入江悠

脚本   :和田清人

原作   :櫛木理宇

制作   :WOWOW

 

目次

 

あらすじ

エイキチが来る

妻、仁美はそう言って失踪した。

東京で医師をやっている岩森明は、娘の愛子を連れ、失踪した妻、仁美を捜しに妻の故郷である鵜頭川村にやって来る。

鵜頭川村は12年ごとに開催される祭り、「エイキチ祭」の準備の真っ最中だった。

岩森と仁美の双子の妹、有美が仁美を捜索する中、鵜頭川村に豪雨災害が起こり、村は孤立する。

 

登場人物

岩森明 松田龍平

本作の主人公。

東京在住の医者。

行方不明になった妻、仁美を捜しに、娘の愛子と共に鵜頭川村にやって来る。

 

矢萩有美 蓮佛美沙子

岩森の妻、仁美の双子の妹。

岩森と共に仁美を捜索する。

 

岩森仁美 蓮佛美沙子

失踪中の岩森の妻。

12年前の「エイキチ祭」の儀式に選ばれた過去がある。

 

矢萩吉朗 伊武雅刀

鵜頭川村で産廃業を営む矢萩総業のトップ。

村一番の権力者。

 

降谷辰樹 工藤阿須加

鵜頭川村青年団の団長。

 

降谷美咲 山田杏奈

村の高校生。

吉朗の孫、廉太郎と付き合っている。

 

感想

テレビドラマレベルの演出

WOWOW制作とはいえテレビドラマなので、当然と言えば当然なのですが、この作品はテレビドラマレベルの演出です。

何を言いたいのかというと、同じ原作者の作品を元に作られた傑作映画『死刑にいたる病』とは、比較するようなレベルの作品ではない、ということです。

 

リアリティがなさすぎる設定

豪雨災害が起きてから何日も立っているのに、救助がまったく来ない、というリアリティのなさすぎる設定。

原作は1979年の設定なのでまだわかりますが、このドラマは時代背景は現代という設定です。

どんな過疎地でも、災害にあった地域に自衛隊の救助がまったく来ない、ということが現代日本においていかにありえないことか、災害時テレビを見ていれば誰でもわかるはず。

 

過疎地にしては若者が多すぎる村

過疎地というのは基本高齢者が圧倒的に多いです。

しかし、鵜頭川村は見た感じ半数程度が若者で、活気があります。

そんな若者が多い村で「この先三千以上の過疎地が消滅するって言われてる!鵜頭川村もその中に含まれてる!」などと若者が演説しているのが、とても滑稽に聞こえます。

いや、それだけ元気な若者がいるなら、全然消滅しませんよ。

 

崩落したトンネルを人力で開通させようとするクレイジー青年団

崩落したトンネルを10人程度の人数で人力で開通させようとする、あまりにもクレイジーなことをやっています。

そんな体力があるんだったら、みんなで山を歩いて越えて、隣町に助けを求めた方がいいと思いますが。

このドラマ、全編にわたってこんな感じで、つっこみどころが満載です。

 

まとめ(つっこみどころ満載のB級ドラマ)

B級映画」という単語はよく聞けど、「B級ドラマ」という言葉はあまり聞いたことがありませんが、それに値するドラマがあるとすれば、それはまさにこのドラマでしょう。

はっきり言ってしまいますが、このドラマに同じ原作者の作品を元に作られた映画『死刑にいたる病』のような緊張感ある演出、金田一耕助映画のようなおどろおどろしい不気味な雰囲気などを期待して観ると、本当にがっかりしていしまいます。

B級映画を観るときのような姿勢で、本当に軽い気持ちで、ありえない設定につっこみつつ楽しむのがこのドラマの正しい楽しみ方です。

 

視聴はWOWOWオンデマンドで!

 

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原作小説

鵜頭川村事件 (文春文庫)

 

コミック版

鵜頭川村事件 上 コミック鵜頭川村事件 (文春e-book)

鵜頭川村事件 下 コミック鵜頭川村事件 (文春e-book)

【素敵すぎる感動作】Netflix映画『パレード』の感想・レビュー(ネタバレなし)

最近充実してきた感のある、日本制作のNetflixオリジナル作品。

そこからまた良作が生まれました。

震災で亡くなるも、残してきた息子への未練から、生と死のはざまにある不思議な世界にとどまってしまった長澤まさみ演じる美奈子。

彼女を中心に、”その先”に行けずにいる様々な人々を群像劇で描く素敵な感動作。

この感動の物語のレビューを、ネタバレなしで書いていきます!

 

『パレード』

2024年 日本映画(Netflix映画) 上映時間 132分

監督   :藤井道人

脚本   :藤井道人

音楽   :野田洋次郎

 

目次

 

あらすじ

震災による津波にさらわれ、気づくと砂浜に打ち上げられていたシングルマザーの美奈子。

息子の安否が気になり、避難場所の人々に話しかけるも、誰も美奈子の存在に気づいてくれない。

唯一美奈子に声をかけてくれた青年の車に乗り、案内された先は、すでに亡くなっているが、生前の世界に何らかの未練があり、”その先”に行けずにとどまっている人達が集まる不思議な世界だった。

 

登場人物

美奈子 長澤まさみ

本作の主人公。

7歳の息子を持つシングルマザー。

テレビ局の記者として働いていたが、震災により35歳で亡くなった。

 

アキラ 坂口健太郎

生と死のはざまにあるような不思議な世界を、記録に残そうとしている青年。

生前は小説家志望だった。

 

マイケル リリー・フランキー

生前は映画プロデューサー。

学生運動に参加していた過去がある。

実質主人公と言ってもいいほどの存在感を見せる。

 

勝利 横浜流星

生前はヤクザだった若い男。

生前事実婚状態にあった女性に心残りがあり、”その先”に行けずにいる。

 

かおり 寺島しのぶ

生前はスナックママだった女性。

残された家族に心残りがある。

 

ナナ 森奈々

いじめが原因で自殺を図った女子高生。

 

田中 田中哲司

元銀行員の男性。

 

タイトル『パレード』の意味とは

タイトルになっている「パレード」とは、月に一度、新月の夜に、”その先”に行けずにいる人たちが行進し、それぞれの会いたかった人たちを捜すことを意味します。

人々がランタンを持って行進する「パレード」のシーンは、野田洋次郎の音楽も相まって、とても美しく描かれています。

 

感想

お涙頂戴ではない感動作

この映画は一応震災をテーマにした感動作ですが、テーマはそれだけではなく、様々なテーマを内含した群像劇に近い作りになっています。

日本で感動作を作ると、どうしてもお涙頂戴路線に行きがちですが、この『パレード』という作品はそうではなく、お涙頂戴シーンはあるにはありますが、そこには行きすぎず、どちらかと言えば「ほっこり心が温まる」といった感じの感動作です。

 

開始30分のところで非常に地味なオープニングタイトル

最初の「パレード」が描かれ、美奈子が”その先”に行けずにいる人達に少しだけ心を許して、乾杯したところで右下に小さく「The Parade」のオープニングタイトル。

忘れたころにやってくる、非常に地味なオープニングタイトルです。

 

苛立ちを息子にぶつける美奈子の回想シーンがいい

序盤の美奈子の回想シーン。

そこで描かれるのは、夫婦喧嘩や、美奈子が苛立ちを息子にぶつけるシーン。

息子との楽しかった思い出だけではなく、こうしたシーンが描かれることで、美奈子のシングルマザーとしてのリアルな生活が浮き彫りになってきます。

 

圧倒的な存在感のリリー・フランキー

主役である長澤まさみを食ってしまいそうな存在感のリリー・フランキー

彼にしか出せない独特な空気、雰囲気、そして笑い所。

彼の出演シーンはどれも見どころたっぷりです。

 

名画『カサブランカ』を観ているマイケルの昔の恋人

リリー・フランキー演じるマイケルが、完成した映画のフィルムを昔の恋人に渡しに行くシーン。

そこでマイケルの昔の恋人である麻衣子が、ハンフリー・ボガートイングリッド・バーグマン主演の名作映画、「カサブランカ」を観ているのが印象的です。

カサブランカ」はイングリッド・バーグマン演じるイルザの心が、ハンフリー・ボガート演じるリックと、もう一人の男性、ラズロとの間で揺れ動く、というストーリー。

結局リックはイルザとの愛よりも使命を選択し、イルザはラズロについていくのですが、麻衣子は本当に好きだった男性と結ばれることができなかったイルザを、自分と重ねているのかもしれません。

 

次第に家族のようになっていく人間関係の描き方がよい

新入りとして”その先”に行けない人達のグループに入る、長澤まさみ演じる美奈子。

そして中盤から仲間入りする、森奈々演じる女子高生のナナ。

どちらも最初は「なにこの変な集団?」みたいな感じで仲間に入ろうとはしませんが、次第に打ち解けて仲間になっていく、その描き方がとてもいいです。

そしてその家族のような集団の中心にいるのは、やはりリリー・フランキー演じるマイケルです。

 

舘ひろしが特別出演

後半、名俳優、舘ひろしがあるシーンで特別出演しています。

短いですが、印象的なシーンです。

 

主題歌は野田洋次郎の「なみしぐさ」

この映画の音楽担当は、ロックバンドRADWIMPSのソングライター、野田洋次郎です。

主題歌(エンディングテーマ)は彼が書いた「なみしぐさ」。

RADWIMPSではなく、「野田洋次郎」名義の曲です。

野田洋次郎らしい、しっとりとしたバラードナンバーとなっています。

 

まとめ

さて、Netflixオリジナル映画『パレード』。

日本制作のNetflixオリジナル作品も、最近本当に充実してきましたね。

豪華キャストで描かれるこのファンタジー人間ドラマ。

日本映画にありがちな、お涙頂戴展開に頼ることなく、胸にほっこりとした感動を生んでくれる、素敵な映画でした。

最近の映画にありがちな、殺伐としたシーンも暴力シーンも一切ないので、週末の夜に家族で観るのもおすすめの作品です!

 

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映画『パレード』の視聴はNetflixで!

 

【緊迫の電話劇】映画『ギルティ』オリジナル版とリメイク版を徹底比較!

電話から聞こえてくる音だけを頼りに事件を解決しようとする警察官の姿を描いた、このワンシチュエーションサスペンス映画『ギルティ』。

画面に映し出されるのはほぼ主人公の顔だけ、という地味さながら、巧みな演出と脚本の力によって、ぐいぐいと映画に引き込まれてしまうこと間違いなしのこの作品、先に観るならどちらがいいのか

デンマークで制作されたオリジナル版と、Netflix映画のリメイク版を徹底比較してみました!

(ネタバレなしのレビューです)

ギルティ

目次

 

映画『ギルティ』のデータ

オリジナル版

2018年 デンマーク映画 原題:Den skyldige 英題:The Guilty

監督   :グスタフ・モーラー

脚本   :グスタフ・モーラー エミール・ニゴー・アルバートセン

キャスト :ヤコブ・セーダーグレン

 

リメイク版

2021年 アメリカ映画(Netflix映画) 原題:The Guilty

監督   :アントワーン・フークワ

脚本   :ニック・ピゾラット

キャスト :ジェイク・ジレンホー

 

あらすじ(オリジナル版とリメイク版共通)

捜査中のトラブルにより現場を外され、緊急通報司令室で通報を受けるオペレーターをしているアスガー(リメイク版ではジョー)は、現場に復帰する日を目前にしていた。

そんな中、彼は今まさに誘拐されようとしている女性からの電話を受け、電話から聞こえてくる音の情報だけを頼りに、事件を解決しようとする。

 

両方観た感想

いわゆるワンシチュエーションものの映画で、映画がほぼ2部屋のみで完結しているというところは、名作『12人の怒れる男』を想起させますが、あちらは12人の男の会話劇だったのに対し、『ギルティ』は画面に映るのはほぼ主人公の顔だけ、という、会話劇、というより「電話劇」という印象です。

 

オリジナル版は特に、ですが、視聴者が画面から得られる情報はほとんど変わらない(ほぼ主人公の顔だけ)にも関わらず、音の情報だけでどんどん映画に引き込まれていく演出はまさに圧巻。

 

終盤、主人公(と視聴者)が信じてきた世界が崩壊する、どんでん返しのある脚本も秀逸です。

 

オリジナル版とリメイク版を徹底比較

舞台設定

オリジナル版の舞台はデンマークコペンハーゲン

リメイク版はアメリカ合衆国のロサンゼルスが舞台となっていて、リメイク版ではロサンゼルスで今まさに山火事が起きている、というオリジナル版にはない設定があります。

 

オープニングの比較

真っ黒な画面から電話の着信音がなり、オペレーターである主人公のヘッドセットのアップから始まるおしゃれかつ簡素なオリジナル版のオープニング。

 

それに対し、山火事が起きているロサンゼルスの街をヘリコプターが飛ぶシーンから始まるリメイク版は、やはり私たちが慣れ親しんだハリウッド的演出です。

 

オリジナル版は本当にストイックな演出

普通のサスペンス映画同様、視聴者の緊張感を煽るような音楽がかかったり、パトカーの映像がインサートされたり、オーソドックスでわかりやすい演出のリメイク版に対し、オリジナル版は劇中音楽がかかることもなく、受信室以外の場面のインサート映像もなく、本当に音は電話の音だけ、映像は9割がた主人公の顔だけ、という徹底したストイックな演出です。

しかしだからこそ、視聴者は主人公と一体になり、電話から聞こえてくる音だけに神経を集中する、という没入感を味わうことができます

 

設備はリメイク版のほうが圧倒的に豪華

映画が公開された時期(オリジナル版:2018年 リメイク版:2021年)と国の違い(オリジナル版:デンマーク リメイク版:アメリカ合衆国)もあるでしょうが、主人公が使用するディスプレイなどの設備は、リメイク版のほうが圧倒的に豪華な印象です。

 

リメイク版では主人公の家族が深く影響してくる

リメイク版の主人公は現在妻と別居していて、娘がいるが、なかなか電話もさせてもらえない、という設定があります。

主人公のスマホの待ち受け画面には娘の写真があり、それが映画の中で何度も表示されます。

リメイク版では主人公が妻で電話するシーンが何度かあるのに対し、オリジナル版では主人公が同僚に家族は出ていったと告げるだけの描写となっています。

 

主人公が感情的すぎるリメイク版

オリジナル版の主人公もカッとなるシーンはありますが、基本的にはそれほど感情の起伏は激しくありません。

それに対してリメイク版の主人公はやたらと感情的になり、大げさなまでにわめき散らすキャラとなっています。

通報者に"Fxxk"、"Axxhole"などと暴言も吐きまくります。

 

オリジナル版の特徴

  • 簡素な演出が逆に緊張感と没入感を生んでいる
  • 淡々とした展開、演出
  • 主人公はほぼ無表情、リメイク版と比べると感情表現は乏しい
  • 劇中音楽がないが、それが視聴者を聞こえてくる「音」に集中させ、リアリティを生んでいる
  • ヨーロッパ映画らしい、淡々とした、ドライなラストシーン

 

リメイク版の特徴

  • 親しみやすい演出
  • 主人公が感情的になりやすい性格
  • オリジナル版と比べて、主人公の家族愛の描写が多い
  • オリジナル版と違い、劇中音楽があり、わかりやすい演出
  • オリジナル版と比較するとドラマティックなラストシーン

 

まとめ(先に観るのはどちらがいいか)

オリジナル版とリメイク版、演出は違えど、脚本の大まかな流れはほぼ同じ、ということで、この秀逸な脚本を真に楽しめるのは最初の1回だけ、という、ミステリー的な要素のある映画です。

 

ここから先は主観ですが、どちらを先に観るのをおすすめするか、と聞かれたら、私ならオリジナル版をおすすめします

 

劇中音楽もない、非常に淡々とした演出で、日本映画やハリウッド映画に慣れた目には、わかりにくい演出だと感じるかもしれませんが、だからこそ、主人公同様に、聞こえてくる音に意識を集中しているうちに、映画にどんどん引き込まれていく、という没入感を味わうことができるでしょう。

 

オリジナル版の視聴はAmazonプライムビデオで↓

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リメイク版の視聴はNetflixで!!

 

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映画『ゆれる』をアマプラで観た感想・レビュー(ネタバレあり)

ゆれる」というこの印象的なタイトル。

いったい何が「ゆれる」のでしょうか。

落ちた」のか、「落とされた」のかをめぐるこのサスペンス映画。

アマプラで観た感想を書いていきたいと思います!

(ネタバレありでお送りします)

ゆれる

『ゆれる』

2006年 日本映画 上映時間 119分

監督   :西川美和

脚本   :西川美和

音楽   :カリフラワーズ

 

目次

 

あらすじ

故郷の田舎を離れ、東京で写真家として成功を収めていた主人公、早川猛。

母親の法事で久々に帰省した際、兄、稔と共に父親が経営するガソリンスタンドで働く昔の恋人、千恵子と再会し、一夜を共にする。

次の日、兄弟と千恵子の3人で、思い出の溪谷へと遊びに行く。

そして猛が写真を撮っていたとき、稔と2人でつり橋の上にいた千恵子が落下し、死亡する。

千恵子は「落ちた」のか、それとも稔に「落とされた」のか。

 

登場人物

早川猛   オダギリジョー

本作の主人公。

故郷の田舎を出て、東京で写真家として成功している。

高給取りで女性にもモテる。

 

早川稔   香川照之

猛の兄。

実家に残り、父親が経営するガソリンスタンドで働いている。

母親が亡くなってからは家事も全てこなし、厳格な父親の下で鬱屈した毎日を送っている。

同僚の千恵子に密かに思いを寄せている。

 

早川勇   伊武雅刀

猛と稔の父。

ザ・昭和の父親、という感じの無骨で厳格な性格。

自由奔放な猛の生き方をよく思っていない。

 

川端千恵子 真木よう子

高校時代の猛の恋人。

故郷の田舎に残り、猛の父が経営するガソリンスタンドで、稔と共に働いている。

田舎の生活に不満を持っていて、東京に強い憧れを抱いている。

 

岡島洋平  新井浩文

猛の父が経営するガソリンスタンドで、アルバイトとして働く青年。

 

早川修   蟹江敬三

早川勇の兄であり、弁護士。

稔の裁判で、弁護を担当する。

 

検察官   木村祐一

稔の裁判の検察官。

 

感想

主人公、猛の愛車「フォード・ファルコン」

序盤から登場する、古臭いインテリアの左ハンドル車、フォード・ファルコン。

エンジンのかかりが悪いのも、古いアメ車感を演出していていい感じです。

この個性的な車、主人公、猛の我が道を行く性格をよく表していると思います。

 

序盤の法事のシーンの演出がすごく良い

この映画、本題のサスペンスパートに入るまでの前置きが結構長いですが、演出が良くお話が面白いので、退屈することはないです。

 

特に序盤の法事で、皆で食事するシーン。

喪服も着ることなく法事にやって来て、奔放に振る舞う猛。

それに対して、来客者に対して女性のような細かい気配りを見せる兄の稔。

この時点で兄弟の対比がほぼ描かれているのが素晴らしい。

 

そして「写真家」という不安定で得体の知れない職業についている猛に対して、ちくちくと嫌味を言う父親、勇に対して猛がはっきり言い返し、勇が激怒するシーンは、かなり痛快で、家父長制の末裔のような勇のキャラを決定づけているシーンでもあります。

 

主人公、猛役のオダギリジョーはハマリ役

主人公、早川猛を演じたオダギリジョーは特別演技が上手いとは思いませんが、この役は本当にハマってると思います。

何がいいって、とにかく無責任なところ。

猛が千恵子を東京に連れていく、と言ったって、この映画を俯瞰して観ている視聴者には、それが口だけだとはっきりわかります。

オダギリジョーが演じる人物にはあらゆる言動に無責任さがつきまとい、それが主人公、猛のキャラにぴったりフィットしています。

 

「やめてよ、触らないでよ!」

不安定なつり橋の上ですがりついてきた稔に、千恵子が言い放った一言。

猛と共に上京するつもりだった千恵子。

その千恵子にとっては、つり橋の上で頼りなくすがりついてくる稔は、鬱屈したしがらみだらけの田舎生活そのもの。

千恵子が拒絶したかったのは、稔ではなく、その田舎生活そのものだったのかもしれません。

 

検察官というよりヤクザな木村祐一

どう見ても検察官ではなくヤクザにしか見えない木村祐一

こんな検察官も探せば中にはいるのでしょうが、リアリティはありません。

このキャスティングは何なのでしょうか。

 

感情的すぎる蟹江敬三演じる弁護士

蟹江敬三演じる弁護士、早川修は被告人である稔の叔父にあたる人物。

そこを考慮すると、裁判において多少感情的になってしまうのもわかると言えばわりますが、それにしても早川修は感情的すぎます。

リアリティよりも、映画としての盛り上がりを重視した結果の演出でしょうか?

 

逮捕されたことで「解放」された稔

中盤、稔が逮捕されたあとの猛と稔の面会シーンで、稔の印象的なセリフがあります。

まあ、あのスタンドで一生生きていくのも、この檻の中で生きていくのも、大差ないな~。バカな客に頭下げなくていいだけ、こっちのほうが気楽だ

稔にとって、田舎の実家に残り、絶対的権力を持つ家父長そのものの父の下で生きていくのは、監獄の中で生きているのとそれほど変わらない人生だったに違いありません。

その後、温厚だったはずの稔が猛を怒鳴りつけ、アクリル板を殴り、猛につばを吐きかけるなどの乱暴な行動をとったのも、「家」という名の監獄から解放されたからこそです。

 

結局この事件(事故)は壮大な兄弟げんかだった

結局千恵子がつり橋から落ちる(落とされる)という事故(事件)の原因となったのは、稔が長年思いを寄せていた会社の同僚の千恵子を、東京から法事で帰ってきただけの猛が、いとも簡単にかっさらっていったことです。

そして猛はそれに対しての責任もとろうとせず、千恵子を抱いたことを稔に正直に言うこともせず、また東京に逃げようとしている。

 

全てを手に入れて、無責任に東京に逃げていく弟への感情、そして好きな女性に長年尽くしても、できた弟に一瞬でかっさらわれる己への無力感、そうした稔の鬱屈した感情が引き金になり、この事故(事件)は起きました。

要はこの映画が描いているのは、法廷を巻き込んだ壮大な兄弟げんかであり、それに巻き込まれて若くしてその生涯を終えることになった千恵子は、本当に気の毒としか言いようがないですね。

 

終盤、普通の感動ものに収まってしまったのが少し残念

終盤、オダギリジョー演じる猛が昔の8mmフィルムを見て涙してからの展開は、それまでが緊張感ある素晴らしい演出だっただけに、最後は普通の感動ものの日本映画になってしまったな~と、少し残念に感じました。

 

賛否が分かれるラストシーン

最後どうなったかは視聴者にゆだねる。

映画では割とよくあるこの手のエンディングは、賛否が分かれ、「しっかり結末を描いてほしい!」という声も常に上がりますが、私は個人的にはこの手の終わり方は好きなほうですね。

 

ロケ地について

美しい渓流や、田舎の風景が印象的なこの映画。

つり橋のシーンは新潟県津南町の見倉橋で、その他のシーンは山梨県富士吉田市で撮影されました。

 

やらかし俳優たちが多数出演

やらかして、テレビや芸能界から姿を消した俳優たち。

香川照之新井浩文ピエール瀧

そしてまだ疑惑の段階ですが、エアガン疑惑の真木よう子

この映画、こうしたスキャンダラスな俳優たちが多数出演しております。

しかしここで名前を挙げた全員、演技はすごく上手いんですよね~。

新井浩文もこの映画では脇役ながら、存在感ある素晴らしい演技を見せてくれています。

 

まとめ

さて、法廷を巻き込んだ、壮大な兄弟げんかだったこの映画。

しかし自分よりも優秀で女にモテる、そして監獄のような家に縛られることもなく、東京というきらびやかな社会で自由に生きる弟に対する鬱屈した兄の感情。

それによって起きてしまった事故(事件)、そしてその後の兄弟の変化。

そうしたものが、よく描かれた、素晴らしいサスペンス映画でした。

まだ観ていない方は、アマゾンプライムビデオで是非!

 

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【画面から迫り来る恐怖】映画『死刑にいたる病』をアマプラで観た感想・レビュー

久々にすごい映画を観ました。

凶悪』『孤狼の血』などの作品で、日本のバイオレンス、サスペンス映画界を牽引する白石和彌監督。

その白石監督の最新作で、2022年に公開されたこの「死刑にいたる病」。

期待通りの、いや、期待以上の怖さを持つ、強烈なサスペンス映画でした。

画面から迫りくる、その静かな恐怖を、ネタバレなしで解説していきます!

死刑にいたる病

『死刑にいたる病』

2022年 日本映画 上映時間 129分

推奨年齢 16歳以上

監督   :白石和彌

脚本   :高田亮

原作   :櫛木理宇 

 

目次

 

あらすじ

鬱屈した大学生活を送る大学生、筧井雅也のもとに、ある日一通の手紙が届く。

差出人は榛村大和。

彼は表向きは人の良さそうなパン屋だったが、裏では24人もの若者をいたぶりながら殺害した連続殺人犯だった。

死刑判決を受けた榛村は、かつて自分のパン屋の客として親しくしていた雅也に、ある依頼をする。

その依頼とは、「立件された9件の殺人事件のうち、1件は自分が起こしたものではない。だからそれを証明するために、君が捜査をしてほしい」というものだった。

 

登場人物

榛村大和(はいむらやまと) 阿部サダヲ

人の良さそうな外見、物腰ながら、特定の年齢の若者を誘拐し、いたぶりながら24人も殺害した連続殺人犯。

24件の殺人事件のうち、9件立件され、死刑判決を受けた。

逮捕される前はパン屋を経営していた。

彼の犯行には規則性があり、

  • 頭が良く、真面目な十代後半の若者をターゲットとする(性別は不問)
  • 殺害する前にターゲットの爪を剥がし、収集する
  • ターゲットに巧みに近づき、信頼関係を築いてから犯行に及ぶ

という法則がある。

 

筧井雅也(かけいまさや)  岡田健史

本作の主人公。大学生。

イケメンだが陰気で社交性に欠ける性格。

Fランク大学にしか行けなかったことに、強いコンプレックスを抱いている。

過去に榛村の経営していたパン屋に通っており、榛村と親しくしていた。

 

金山一輝(かなやまいつき) 岩田剛典

子供時代に榛村と親しくしていた男。

長髪で顔を隠している。

 

加納灯里(かのうあかり)  宮崎優

雅也の大学の同級生。雅也に好意を抱いている。

 

筧井衿子(かけいえりこ)  中山美穂

雅也の母親。

他者依存性の強い性格。

 

感想

序盤から残虐シーン注意

序盤から爪はがしなど、犯人が若者たちをいたぶる残虐シーンがあるので、苦手な人は視聴注意してください。

残虐行為を行ったあと、近所の人に愛想よく挨拶するというのも、DV男的でいかにもありそうな感じです。

 

序盤の面会シーンからすでに普通の日本映画ではないことがわかる

「普通の日本映画」というのが何を意味しているのかというと、テレビでよくやっている刑事ドラマ、サスペンスドラマの延長線上にある映画のことです。

 

殺人犯である榛村と雅也の最初の面会シーン、この面会シーンが普通の日本映画の演出だとどうなるかというと、雅也が「なぜあんなひどいことを!」などと怒ったり、やたら感情的になったりします。

なぜそういう演出になるかというと、大多数の日本人はそういう演出が好きで、それは日本のサスペンスの1つのテンプレートになっているからです。

 

しかしこの映画ではそうはならず、雅也は目の前にいる榛村に、少し恐怖を抱いているような表情で、おずおず遠慮がちに受け答えをしています。

とてもリアリティのある演出だと思います。

 

一見いい人だがイカれた男を演じ切った阿部サダヲ

一見人の良さそうなただのおじさんである、阿部サダヲ演じる榛村大和

その正体は特定の年齢の若者を狙い、いたぶりながら24人も殺した連続殺人犯。

刑務官ですらたらしこんでしまう天才的人たらしで、だからこそ、24人もの若者が彼を信用して付いていってしまったのだということがわかる、見事な演技です。

時折見せる狂気を帯びた目がとても怖い。

 

榛村に洗脳されていく雅也を演じた岡田健史(水上 恒司)

岡田健史というのは彼が2022年8月まで使っていた芸名で、現在は水上恒司という本名で活動しています。

彼の演技は、この映画で初めて見たのですが、主役に抜擢されるだけあって、ただのイケメンではなく、確かな演技力の持ち主だと思いました。

 

彼が演じた主人公の大学生、筧井雅也は、イケメンながら性格は陰気で、社交性もない男性。

その彼が、榛村に影響されて変化していく。

その変化の描写も、この映画の見どころの一つです。

 

中山美穂の演技力に驚く

かつてのアイドル、中山美穂

主人公、筧井雅也の母親、筧井衿子役を演じています。

かつての美貌はやや陰り、疲れた中年女性といった雰囲気ですが、それが役にうまくハマっています。

この母親からならこのイケメンが生まれるだろう、というリアリティも感じさせてくれます。

そしてこれは白石監督の演出力もあるでしょうが、演技もとても上手いです。

彼女は若い頃から女優をやっていますが、若い頃はここまでの演技派ではなかったはず。

 

日本映画のテンプレにまったくあてはまらない作品

日本映画のテンプレとは何か。

皆さんも映画予告とかでよく見かけるでしょう。

  • 登場人物が無意味に叫ぶ
  • 無意味に泣く
  • 無意味に走る

この映画は、そのテンプレにまったくあてはまるところがありません。

むしろ登場人物が感情的になるシーンがほとんどなく、本当に静かに、淡々と物語は語られていきます。

それでいて、映画には常に緊張感があり、視聴者に、確かな恐怖を与え続けてくる。

さすがの演出力、といったところです。

 

1つだけ気になったシーン

全編ハイレベルで展開するこのサスペンス映画ですが、鑑賞していて1カ所だけ、「あれ?」と感じたシーンがあります。

それは、中盤の雅也と金山一輝の追いかけっこのシーンです。

あそこだけ、突然演出家が代わり、テレビドラマになったような感じがしました。

そう感じた人は結構いるはず。

 

エンドロールのJ-POPなし

現在の、ほとんどの日本映画に存在する、エンディングの商業目的のJ-POP。

エンドロールはそれまで2時間かけて観てきた映画の余韻に浸る場面ですが、ここで映画の内容とまったく関係のないJ-POPがかかってしまうと、余韻が台無しになります。

ビジネスのためにその余韻を台無しにしてしまっている映画が多数存在しますが、この映画ではそのJ-POPがなく、映画の雰囲気に合った音楽で、しっかり余韻に浸らせてくれます。

この辺も、さすが白石和彌監督、といったところです。

 

タイトル『死刑にいたる病』の意味とは

これは私個人の見解ですが、「死刑にいたる病」とは、連続殺人犯であり、天才的人たらしでもある榛村のマインドそのものだと思います。

人は皆、自分の周りにいる人間に影響を受けて変わっていきますが、巧みな話術と人間的魅力を持つ榛村と関わった人達は、皆彼に洗脳され、影響を受けていきます。

主人公である雅也も、榛村に影響され、作中で暴力的な事件を起こしています。

女性に対してもずっと消極的だった彼が、大学の同級生の加納灯里に対して決定的な行動をとることができたのも、榛村のおかげ、といってもいいのではないでしょうか。

 

そして「死刑にいたる病」が確実に伝染していっているということが、この映画の衝撃のラストシーンでも表現されています。

 

まとめ(残虐シーンは視聴者に恐怖を植え付けるために必要だった)

非常によくできた緊張感あふれるサスペンスで、素晴らしい作品でしたが、序盤の痛々しい残虐シーンには賛否が分かれるところだと思います。

私は個人的にはあの痛々しいシーンは、視聴者に、榛村に対する恐怖を植え付けるために必要なシーンだと思いました。

あのシーンがあるのとないのとでは、視聴者の榛村に対する恐怖の度合いがかなり変わってきたはず。

あのシーンがあるからこそ、阿部サダヲの冷たいまなざしが、より怖く見える。

本当に、そのへんのホラー映画などよりはるかに怖い、そして心に残る、素晴らしい映画でした。

 

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